サイエンス

プラスチックを食べて消化するイモムシが発見される

by European Parliament

ゴミとして出るペットボトルやスーパーの袋などの原料であるプラスチックは分解が難しいのですが、新たな調査結果として、「イモムシがプラスチックを食べて消化してくれる」という内容が報告されました。今後のゴミ処理の方法を変える可能性があるものとして見られています。

Polyethylene bio-degradation by caterpillars of the wax moth Galleria mellonella: Current Biology
http://www.cell.com/current-biology/abstract/S0960-9822(17)30231-2

Caterpillar found to eat shopping bags, suggesting biodegradable solution to plastic pollution
https://phys.org/news/2017-04-caterpillar-bags-biodegradable-solution-plastic.html

The Very Hungry Plastic-Eating Caterpillar - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/science/archive/2017/04/the-very-hungry-plastic-eating-caterpillar/524097/

スペインの研究機関「IBBTEC」でハチを飼育していたFederica Bertocchiniさんが、ある日、ハチの巣にイモムシが集まっているのを発見。イモムシはハチの巣の原料である蜜ろうを食べてしまうため、Bertocchiniさんはイモムシをプラスチック製の買い物袋に入れながらハチの巣を掃除していました。そして、ふと買い物袋を見ると、さっきまではなかった穴が空いているのに気づいたとのこと。これが、偶然にも「イモムシがプラスチックを食べる」ということを発見したきっかけです。


食品のパッケージや買い物袋などで使われるプラスチックは、分子の鎖が長く、炭素と炭素の結びつきが強固であるため、バクテリアなどによって分解するのが難しいのが問題点で、環境汚染を引き起こしやすいと言われています。過去にはペットボトルの原料であるポリエチレンテレフタレートなどを分解するバクテリアなどが発見・報告されていますが、これらの微生物がプラスチックを分解するには数週間から数カ月もの時間がかかるのがネックでした。しかし、Bertocchiniさんが確認したハチノスツヅリガの幼虫がプラスチックを食べる速度は速く、買い物袋に穴ができるまでは40分ほどで、数時間後には買い物袋はボロボロになっていたとのこと。

もともとBertocchiniさんは動物の胎児の研究を行っており、昆虫は研究分野ではないのですが、イモムシがプラスチックを食べるという現象に興味を持ったBertocchiniさんは本当にイモムシがプラスチックを消化しているのか調査を開始。イモムシをスムージー状につぶしたものをポリエチレンと合わせたところ、半日後に13%のプラスチックが消失したそうです。


その後、Bertocchiniさんはイモムシの消化について確かめるべく、ケンブリッジ大学の生化学者であるPaolo BombelliさんとChristopher Howeさんと協力し、イモムシと反応を起こす化学物質について分析し、最終的に、プラスチック中のいくつかの物質がエチレングリコールに変換されていることを確認しました。これによって、「イモムシがプラスチックを消化している」ということが正式に確認されたわけです。

なぜイモムシがプラスチックを消化するのか?という理由について、Bertocchiniさんは、イモムシが食べる蜜ろうの中には、プラスチック中に含まれる炭素と炭素の結びつきと同じものが含まれるためと見ています。イモムシが蜜ろうを消化できるように進化した過程で、プラスチックも同様に消化できるようになったというわけです。

ただしミシガン州立大学のRamani Narayan氏は、例えイモムシのペーストがプラスチックをエチレングリコールに変えたとしても、そのインパクトは小さいものだと見ています。また、プラスチックゴミを処理するためにイモムシにプラスチックを食べさせたとしても、イモムシは結局プラスチックの破片を排出することになるため、「生物によってプラスチックを分解させる方法は、プラスチックゴミを処理する魔法のような方法ではない」と指摘しています。また、無酸素状態であるゴミ処理場でイモムシが生きられないことなどから、「実験と実際に利益を得られるシステムを構築することの間には、長い道のりがある」という意見も上がっています。

ただ、Bertocchiniさんもプラスチックの処理にイモムシそのものを取り入れることは考えておらず、ポリエチレンを消化する酵素を特定することが重要であると考えている様子。記事作成時点では蓄積し続けているプラスチックを取り扱う最善の方法が存在しないため、テネシー大学のJennifer DeBruyn氏などは、「まずはイモムシそのものが消化しているのか、それともイモムシの体内にいるバクテリアが消化しているのかを知りたいところです」と語っています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
なぜ虫はあんなに小さい脳で複雑な行動ができるのか? - GIGAZINE

寄生虫に寄生し思考を操作して相手に内臓を捧げさせる「Euderus set」 - GIGAZINE

銃弾で撃たれたような激痛が24時間続く「ブレット・アント(弾丸アリ)」の毒針を人間が食らうとどうなるのかを体を張って実験 - GIGAZINE

432時間サイクルで食用虫を養殖し続ける飼育装置「FARM 432」 - GIGAZINE

食料不足を救う可能性のある新食材「パワー小麦粉」の原料とは? - GIGAZINE

in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.