サイエンス

無神論者はインモラルだと見なされやすいという研究結果

By Caitlin 'Caity' Tobias

最新の研究によると、無神論者はキリスト教徒、イスラム教徒、ヒンズー教徒、仏教徒よりも簡単に悪事を働いたと疑われることが明らかになりました。また、同じ無神論者ですら、何かしらの宗教徒よりも無神論者が悪事を働いたと疑うそうです。

Global evidence of extreme intuitive moral prejudice against atheists | Nature Human Behaviour
https://www.nature.com/articles/s41562-017-0151


Atheists tend to be seen as immoral – even by other atheists: study | World news | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2017/aug/07/anti-atheist-prejudice-secularity

2017年8月にNature Human Behaviourで公表された最新の研究では、5大陸13か国の3000人以上の被験者を対象に無神論者に対して人々が抱く偏見についての調査が行われました。調査対象となった13か国には、中国・オランダのような宗教とは無縁な世俗的な国から、アラブ首長国連邦やアメリカといった宗教徒の多い国まで多岐にわたっています。なお、被験者は大まかにキリスト教徒・イスラム教徒・ヒンズー教徒・仏教徒・無神論者の5つに分類可能だったそうです。

調査では、被験者に「幼少期に動物を殺し、大人になってからは教師になって5人のホームレスを殺害する」という架空の殺人鬼に関する説明が行われます。続いて、被験者の半分には「架空の殺人鬼は宗教徒であった可能性が高い」と言い、もう半分には「無神論者であった可能性が高い」と伝えます。その後、架空の殺人鬼がどこの宗教徒であったか、あるいは無神論者であるかを被験者に考えてもらったところ、「架空の殺人鬼は無神論者である」と想定する確率は殺人鬼が宗教徒であると想定する確率の約2倍であったそうです。つまり、被験者に伝えた内容に関わらず「殺人鬼は無神論者である」と決めつけた被験者が圧倒的に多かったというわけ。

By Wimena Kane

以下のグラフは、被験者が架空の殺人鬼を無神論者(紫)と宗教徒(赤)のいずれに回答したかを示すもの。縦軸がパーセンテージで横軸が調査対象者の出身国で、点から上下に伸びている線は予測誤差の範囲を示しています。グラフを見ると、無神論者に対する不信は、アメリカ・アラブ首長国連邦・インドなどの最も宗教的な国がとても強く抱いており、世俗的な国はこれらの国々と比べると偏見が小さいことがわかります。しかし、予測誤差を含めてもフィンランドとニュージーランド以外の国では明確に無神論者に対する偏見が存在することもわかります。


この調査結果は、世俗的な世界ですら、無神論者を含む多くの人々が「神からの罰を恐れるならば人々は悪事を働くことはない」という考えをいまだに持っていることを示しています。これについて研究に参加した心理学者のウィル・ジャーヴェイス教授は、「無神論者ですら同じような直感で反イデオロギー的偏見を抱えているように見える」「これは社会に深く根付いた宗教的規範の蔓延に由来するものであると考えられる。現在ではかなり世俗化している場所でさえ、人々は依然として宗教が道義的な保護手段であると信じているのだから」と語っています。

この調査の結果について、「世界中で宗教的信念が、不道徳な行為の誘惑に対する保護手段として直感的にみなされていることを示している」と研究チームは語っています。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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