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「FacebookによるInstagramやWhatsAppの買収は独占禁止法違反」とする一度却下された訴状を連邦取引委員会が修正して再提出


アメリカの連邦取引委員会(FTC)は2020年12月にFacebookを独占禁止法の違反で提訴し、InstagramやWhatsAppの売却を求めましたが、2021年6月に連邦地方裁判所がこの訴えを却下しました。これを受けてFTCが、却下された訴状の問題点を修正し、再び裁判所に提出したことを発表しました。

FTC Alleges Facebook Resorted to Illegal Buy-or-Bury Scheme to Crush Competition After String of Failed Attempts to Innovate | Federal Trade Commission
https://www.ftc.gov/news-events/press-releases/2021/08/ftc-alleges-facebook-resorted-illegal-buy-or-bury-scheme-crush


FTC files renewed antitrust complaint against Facebook
https://www.cnbc.com/2021/08/19/ftc-files-new-antitrust-complaint-against-facebook.html

FTC says Facebook has been a monopoly ‘since at least 2011’ in amended antitrust complaint - The Verge
https://www.theverge.com/2021/8/19/22627032/ftc-facebook-amended-antitrust-complaint-monopoly-instagram-whatsapp

FTC: Facebook was bad at business, so it “illegally bought or buried” competition | Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2021/08/facebook-illegally-bought-or-buried-competition-ftc-says-in-refiled-lawsuit/

近年では、各国でFacebookをはじめとする巨大IT企業に対する独占禁止法違反の捜査が進んでおり、2020年7月にはアメリカ下院司法委員会の反トラスト小委員会が公聴会を開き、Google・Amazon・Facebook・Appleの各CEOが証言を行いました。10月には日本の公正取引委員会も、「Google・Apple・Facebook・AmazonをアメリカやEUと共に厳しく監視する」と表明しています。

そんな中、アメリカのFTCは「Facebookによる2012年のInstagram買収や2014年のWhatsApp買収、そしてFacebookプラットフォームを利用するソフトウェア開発者に課した厳しい条件が、市場における独占力を強めるための反競争的な行為に当たる」として、2020年12月9日にFacebookを独占禁止法の疑いで提訴し、FacebookからInstagramやWhatsAppを分離することを求めました。ところが2021年6月28日、コロンビア特別区連邦地方裁判所が「裁判所はFacebookの主張のすべてに同意するわけではありませんが、FTCの訴状は法的には不十分であり、棄却されなければならないことには同意します」として、FTCの訴えを却下しました。

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コロンビア特別区連邦地方裁判所のジェームズ・ボースバーグ裁判官は棄却の理由について、「FTCは独占禁止法違反を主張するのに必要な要件、すなわちFacebookがSNS市場で独占的な力を持っていることを立証するのに十分な証拠を提示しませんでした」と説明。その後、FTCに対して訴状を修正する猶予期間を与えました。

これを受けてFTCは、Facebookの独占禁止法違反を補強するデータを追加したり指摘点の補足を行ったりした上で、訴状を裁判所に再提出しました。修正した訴状の提出はFTCにおいて賛成3票:反対2票で決定されたとのことで、巨大IT企業の独占に厳しい姿勢を示しているリナ・カーン委員長の賛成票が必要不可欠でした。カーン氏は反Amazonの急先鋒として知られ、Facebookからも独占禁止法違反の調査から身を引くよう請願を受けていましたが、記事作成時点ではこの請願に応じていません。

今回の修正された訴状は当初と同じように、FacebookによるInstagramおよびWhatsAppの買収は独占禁止法違反であると主張しています。FTC競争局の代理局長であるHolly Vedova氏は声明の中で、「Facebookにはビジネスの洞察力が欠けており、モバイルへの移行を生き抜くための技術的な才能もありませんでした。新しい革新的な企業との競争に失敗し、競合相手の人気が実存的な脅威になった時、Facebookはそれらを違法に買収するか葬り去りました」と述べています。


FTCの主張によると、PC向けのサービスとして成長してきたFacebookは、2010年代のモバイルインターネットやスマートフォンへの移行において遅れをとっており、マーク・ザッカーバーグCEOも「Facebookはモバイル分野に脆弱(ぜいじゃく)である」と認識していたそうです。しかし、Facebookにはスマートフォンベースのコミュニケーションに統合する人材が不足していたため、モバイル分野で成功していたInstagramやWhatsAppを買収することで脅威に対処したとFTCは主張。これはライバル企業の競走能力を大幅に削ることとなり、独占的な支配力の強化につながったとのこと。

また、Facebookはソフトウェア開発者に対し、APIを介してFacebookプラットフォームの利用を促していましたが、やがてAPIの利用ポリシーを変更。Facebookプラットフォームにアクセスできる条件として「Facebookと競合しないこと」「ライバルの成長を促進しないこと」などの項目を設け、Facebookの潜在的な競合相手となるアプリ開発者を排除したとFTCは主張しています。こうした競合企業の買収および開発者の排除というFacebookの戦略について、FTCは「Buy-or-Bury(買うか葬るか)戦略」と呼んでいます。

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FTCは訴状の中で、Facebookが存在する市場は「personal social networking services(パーソナルソーシャルネットワーキングサービス)」と呼んでいます。パーソナルソーシャルネットワーキングサービスとは、影響を与えあう人間の結びつきを示すソーシャルグラフを利用してユーザー接続をマッピングし、情報の拡散ではなく「個人同士の連絡や対話」に焦点を当てた機能や、ユーザーがお互いを見つけるための機能においてユニークな存在だとFTCは主張しています。

FTCの定義によると、特定の目的を持ってつながるビジネス特化型SNSのLinkedInや、アクティビティ追跡とSNSを統合したStravaなどはパーソナルソーシャルネットワーキングサービスに含まれないとのこと。また、YouTubeやTikTokといったコンテンツを共有するプラットフォームも定義に適合せず、友人や家族をつなぐことに焦点を当てていないTwitterやRedditも除外されるそうです。

最初の訴状が却下された際、裁判官はこのパーソナルソーシャルネットワーキングサービスに関する説明が曖昧であり、Facebookの市場支配力を強く見せるために複数のライバル企業を明示的に含めなかったと指摘していました。これを受けてFTCは新たなデータを追加し、「アメリカのパーソナルソーシャルネットワーキングサービスにおけるFacebookのシェアは、2012年以降65%を超えており、少なくとも2011年には同程度のシェアになっていました」と主張しています。

FTCによる訴状の再提出について、FacebookはTwitter上で「裁判所が訴状を却下し、主張の根底が欠如していると結論づけたにもかかわらず、FTCがこの無益な訴訟を続けると選択したのは残念です」とコメント。InstagramやWhatsAppの買収は当時のレビューで問題ないと判断されており、プラットフォームのポリシーも合法なものであるため、Facebookが独占禁止法違反だとするFTCの主張は正当なものではないと述べました。

It is unfortunate that despite the court's dismissal of the complaint and conclusion that it lacked the basis for a claim, the FTC has chosen to continue this meritless lawsuit.

— Facebook Newsroom (@fbnewsroom)

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in メモ, Posted by log1h_ik

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