サイエンス

「教師の質」は生徒の成績にほとんど影響しないという研究結果

by 12019

「優れた教師は生徒の成績をアップさせる」ということは広く信じられており、過去の(PDFファイル)調査では教師の資格や教室編成能力が、生徒の成績を最大で30%も左右すると示されていました。ところが、ニューイングランド大学の研究チームが合計で4533組の双子を調査した研究では、教師の質やクラスの規模が生徒の成績に及ぼす影響は2~3%ほどしかないと結論づけられています。

Estimating classroom-level influences on literacy and numeracy: A twin study. - PsycNET
https://psycnet.apa.org/record/2019-60508-001

Don't blame the teacher: student results are (mostly) out of their hands
https://theconversation.com/dont-blame-the-teacher-student-results-are-mostly-out-of-their-hands-124177


研究チームのカーリー・リトル氏は、「私たちは教室の環境が生徒の成績にどれほど影響するのかを知りたかったのです」と述べています。双子は遺伝子の全てまたは半分を共有しており、さらに両親や住んでいる場所、通っている学校といった多くの要因も共有しており、教室環境が成績に及ぼす影響を調査するのに適した対象といえます。

過去の研究から、双子の読み書き能力の発達において遺伝子が占める影響力は、40~75%ほどだと示されています。残りの数十%ほどが、両親の持つ教育的価値観や社会経済的な状況といった双子が共有する要因、あるいは学習するクラスといった双子が共有しない要因によって左右されるとのこと。

研究チームはアメリカとオーストラリアに住む合計4533組の双子のデータをもとに、幼稚園から2年生(日本の小学2年生)までの双子の読み書き能力、3年生(日本の小学3年生)・5年生(日本の小学5年生)・7年生(日本の中学1年生)・9年生(日本の中学3年生)の段階における双子の読み書き、計算能力に教室環境が及ぼす影響力を調べました。

by F1Digitals

分析の結果、双子たちが別々の教室で学習していても、同じ教室で学習していても、成績の差にほとんど影響が現れないことが判明。研究チームによると、教室の違いが双子の成績の差に与える影響は2~3%ほどだったそうです。一方、それぞれの双子のペア間にみられる成績の違いは、60%が遺伝的影響によるもので、残りは学校そのものの違いを含むその他の環境要因によるものだったとのこと。

今回の研究では、教師の質が生徒の成績に大きな影響を与えることが示されませんでしたが、「教師の質が生徒に与える影響力は大きい」という説は広く受け入れられています。アメリカでは教師の質が生徒の成績を左右するという前提のもと、教師が生徒の成績に責任を持つ仕組みが取り入れられています。また、「自分はあの時の先生から大きな影響を受けて人生が変わった」として特定の教師を思い起こす人も多いはずですが、リトル氏は「それは教師とあなたの間だけの個人的な経験です」と指摘。

「私たちのデータは個人の経験について検出できず、あくまで平均的な教室の影響を検出します」「私たちの研究は、読み書きと計算能力の中心的な領域で、教師が生徒に公平な教育を行っていることを示唆しています」と、リトル氏は述べました。

by PAL LTER

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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