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Raspberry Piが入手困難な状況へ、世界的部品不足による生産制限が原因か


シングルボードコンピューターの代名詞的存在であるRaspberry Piが品薄状態となり、入手困難になっているとエンジニアのジェフ・ゲーリング氏が指摘しています。

You can't buy a Raspberry Pi right now | Jeff Geerling
https://www.jeffgeerling.com/blog/2022/you-cant-buy-raspberry-pi-right-now

ゲーリング氏によると、品薄状態となっているRaspberry Piは、Raspberry Pi 4 Model B、Raspberry Pi Compute Module 4、Raspberry Pi Zero 2 W、Raspberry Pi 400という比較的新しいモデルで、2022年初頭から複数のベンダーで品薄となっていた模様。なお、Raspberry Pi PicoやRaspberry Pi Pico Wといったモデルは2022年10月時点でも入手可能となっているそうです。


入手困難な状況に陥っているRaspberry Piの各モデルを購入する最も手っ取り早い方法は、「インターネットオークションサイトのeBayで転売価格のものを購入する」というもの。ただし、販売価格が35ドル(約5100円)のモデルが100ドル(約1万5000円)以上で販売されているケースもあるそうです。

Raspberry Piが品薄状態となっている理由として、ゲーリング氏は「Raspberry Piは各モデルのサポートを継続的に行っている数少ないシングルボードコンピューターメーカーのひとつ(おそらく唯一のメーカー)であり、ドキュメントを継続的に改善し、初心者から上級者までのあらゆるユーザーに優れたエンドユーザーエクスペリエンスを提供することに重点を置いているため」と「世界的な部品不足による生産制限」の2点を挙げています。

「世界的な部品不足による生産制限」について、ゲーリング氏はRaspberry Pi 4 Bが採用しているBroadcomBCM2711が特に不足していると指摘。この「世界的な部品不足による生産制限」に悩まされているのはRaspberry Piだけでなく、自動車メーカーやNVIDIA、Intel、AMDなどの半導体メーカーも同様です。


世界的なパーツ不足に伴いRaspberry Piは各モデルの生産を増やすことに失敗。公式は限られた在庫を小売業者ではなくOEMパートナーに優先的に供給したため、品薄状態に陥ってしまったというわけ。これについてゲーリング氏は、「これは理想とはほど遠いものです。メーカーやハッカーコミュニティの多くは、2012年のRaspberry Pi登場以来、有志の草の根活動により発展してきた同組織に裏切られたかのように感じています」と述べました。

ゲーリング氏はRaspberry Pi財団のエベン・アプトンCEOに直接Raspberry Piの品薄状態について質問しており、アプトンCEOは「まだ供給が制限されている」「OEM顧客を優先して供給をおこなっている」「顧客への供給を制限している」ことなどを明かしています。また、アプトンCEOは、2022年10月時点では月間40万台のRaspberry Piを生産していることも明かしました。

これに加え、Raspberry Pi財団はOEMメーカーがRaspberry Piを転売しているかをチェックするための新しいプロセスを導入し、「Raspberry Piに依存している企業が倒産しないように気を配っている」とも言及しています。


続けて、アプトンCEOは「我々はソフトウェアサポート、メンテナンス、品質に対するアプローチを何よりも重視しています。当社のソフトウェアは、発売から10年以上が経過したものも含め、すべてのRaspberry Piで動作します。そして、今後も更新され続ける予定です」と語りました。

これに対して、ゲーリング氏は「これが中古のRaspberry Piが希望小売価格の2倍以上の価格で取引され続けている理由です。実際、別のシングルボードコンピューターメーカーの製品を使うよりも、Raspberry Piを使う方がはるかに簡単です」と述べ、Raspberry Piの供給不足の一端となっている「手厚いソフトウェアサポート」が「Raspberry Piを選ぶ理由」にもなっていると指摘。


ゲーリング氏はRaspberry Piが品薄状態となっているため、「代替品となるシングルボードコンピューターをユーザーが探し始めている」と語りました。Raspberry Piと同等のシングルボードコンピューターが必要な場合は、、KhadasRadxaOrange Piといったメーカーを推奨しており、これらのシングルボードコンピューターは100ドル未満で購入できると指摘。ただし、Raspberry Piは公式がさまざまなドキュメントを公開しており初心者でも導入が簡単ですが、これらのメーカーはRaspberry Piほど手厚いサポートがないとゲーリング氏は指摘しています。

Raspberry Pi以外のシングルボードコンピューターの場合、「ISOファイルをダウンロードしてUSBメモリに保存してインストールする」だけで使えるようになるケースは少なく、より多くの作業が必要になるとのこと。また、一部のシングルボードコンピューターにはHDMIポートやLANアダプターといった基本的な構造が足りておらず、Linuxすらインストールすることができないそうです。

そのため、ゲーリング氏は「他のシングルボードコンピューターを避けるべきというわけではありませんが、Raspberry Piで得られるのと同じレベルのユーザーエクスペリエンスとサポートが得られるとは期待しないことです」と言及しました。

なお、ゲーリング氏によるとRaspberry Piの品薄状態は2022年中は収まりそうもなく、「2023年に緩和されることを期待しています」と希望的観測を述べています。

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in ハードウェア, Posted by logu_ii

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