サイエンス

幸せホルモン「オキシトシン」が心臓発作で傷付いた心臓を回復する可能性が示される


「幸せホルモン」として知られるオキシトシンに、損傷した心臓組織の再生を助ける可能性があることが分かりました。この結果により、オキシトシンが心臓発作の治療に使用できる可能性が示されました。

Frontiers | Oxytocin promotes epicardial cell activation and heart regeneration after cardiac injury
https://doi.org/10.3389/fcell.2022.985298

'Love hormone' oxytocin may help mend broken hearts (literally), lab study suggests | Live Science
https://www.livescience.com/oxytocin-heart-regeneration

オキシトシンは他人とスキンシップを行ったりオーガズムに達したりすることで分泌され、他人とのコミュニケーションを快楽に変える作用があることなどが研究により判明しています。

ミシガン州立大学の研究チームが行った研究により、オキシトシンには血圧を下げ、炎症を抑え、通常の細胞代謝の反応性副産物であるフリーラジカルを拡散させることによって、心臓血管系を損傷から守るのに役立つことが新たに分かりました。

心臓は損傷したり壊死(えし)したりした組織を修復・置換する能力が限られていますが、心外膜と呼ばれる細胞組織の一群は例外で、筋肉が存在する心臓組織の層に移動し、幹細胞のような細胞に変化し、心筋細胞などいくつかの心臓の細胞に変化することができるそうです。このプロセスは主に人間以外の動物で見られていますが、人間でも発生する可能性がいくつかの研究で示唆されているとのこと。しかし実際に起こったとしても、組織再生にはあまりにも効率が悪いことが指摘されています。


ミシガン州立大学の研究チームは、心筋細胞に変化する心外膜細胞を何らかの方法で増やすことで、心臓の自己再生を助けることができるのではないかと推測し、研究を行いました。そこで、研究チームがさまざまな脳内ホルモン15種類を人間の細胞に作用させる実験を行ったところ、オキシトシンのみが上記のプロセスを速やかに進めることが分かったとのこと。

次に、脳や骨、心臓などの体内組織を再生させる能力を持つゼブラフィッシュを観察したところ、ゼブラフィッシュの脳は心臓の損傷を受けてから3日以内に狂ったようにオキシトシンを出し始め、分泌量は損傷前の最大20倍にも膨れあがることが分かったそうです。さらに前述の人間の細胞でも見られたように、オキシトシンは心臓に到達し、心外膜細胞を心筋細胞へと変化させるプロセスを始めたとのことです。

これらの実験から、オキシトシンが損傷後の心臓の修復に重要な役割を果たすことが示唆されたと、研究チームは記しています。これにより、オキシトシンの効果を高めることで、心臓発作などで損傷した心臓の修復や、心不全のリスクを低減するような新しい治療法を開発できるかもしれないと研究チームは述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「犬は飼い主と再会するとうれし泣きの涙を流す」ことが日本の研究で判明 - GIGAZINE

犬と触れ合う「ドッグセラピー」にはストレスを下げ幸福を感じさせ学習効果を高めるなど多様な効用がある - GIGAZINE

愛情ホルモン「オキシトシン」は社交的なコミュニケーションを快楽に変えマリファナのような中毒性を与える - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1p_kr

You can read the machine translated English article here.